□■Lonely War ex19■□
  長いこと、夢を見ていた気がする。ゆっくりと目を開けると見慣れない天井があった。部屋の造りは変わっている。一昔前のヨーロッパの安アパートのようなレトロなムード。汚いテーブルと椅子がひとつ。
 出窓のところに男が座ってぼーっと外を眺めているのにふと気がついた。ぼさぼさに伸びた髪に隠れた整っているともいないとも言えないような、冷めた顔付き。……あ。誰か、わかった……。
「……ああ。目が覚めてたのか」
 俺の方をちらりと見てそれだけ言うとまた窓の外に目を向ける。つかみ所のない雰囲気。
「……池山、浩平、さん……?」
 見たことがあるわけだ。
「……俺のことなんて知ってるんだ?」
 つまらなさそうにこっちも見ずに言う。
「あ、はい……。俺、バンドとかやってたんで」
「ふうん」
 ……会話の続かない男だなあ……。
「ねーねー、池山さん」
 もう俺がここにいることを忘れ去ったような顔でしれーっと窓の外を見る池山さんに声を掛ける。俺、重っ大なことに気がついた。
「俺、ハラ減っちゃったんですけどー」
「……」
「良く考えたらここんトコまともにメシ食ってないしー」
「……」
「拾ったついでに食い物恵んで下さい」
 さすがに呆れたような顔をされた。……しょーがないでしょー。自然の摂理ってやつでしょー腹が減るのはー。人間の生理現象ですな……。
「お前、料理出来る?」
「一矢です」
「……いーよ何でも」
「一矢ですってば」
 ……どーして自己紹介してるのに肩を落とすのかしらん。
「……一矢は料理出来るの」
「出来ますよ。上手いっすよー、俺」
「じゃああっちにキッチンがあるから自分で……」
 言いかけて池山さんは「あ」と呟いた。出窓から降りてドアに向かって歩き出す。
「……あのぉ」
 恐る恐る声を掛けると、ドアを開けたまんまで立ち止まって俺を振り返った。
「お前、怪我人だから。寝てな」
 淡々と言って池山さんが出て行くと、仕方ないんで横になる。良く見ると俺が着ているのは血でどろどろだった俺の服じゃなかった。さすがにジーンズは俺のだったけど。
 ……着替えさせてくれたんだ?すげえ無愛想だけど、良い人なんだ……。
 汚い服で自分のベッドに寝かせたくなかっただけと言う可能性はこの際考えないことにする。人の好意は、好意的に素直に解釈しましょう。
(……)
 考えなきゃなんないことはたくさんあった。でもとにかく当面の問題は、今後の生活だ。帰るトコないし。……まぁ、ケーサツから逃亡つったって、別に俺、犯罪者じゃないし、悪いことしてないし、でもうざいし。
 あー、金もねーわ仕事もねーわ家もねーわ未成年だわ。
 どうするよ?俺。
 うだうだと考えているとやがて池山さんがお盆を持って入って来た。小さいテーブルに置いて俺を見る。
「ここまでは来れるだろ」
「はい」