□■アウトサイダー■□
 明日から冬休みのせいか、校舎内に漂うムードは少し浮き足立っていた。下駄箱でスニーカーを脱ぎ、室内履きに指定されている運動靴を取り出す。右足を突っ込んだところで、後ろから肩を叩かれた。
「おっす」
「おう……」
 同じクラスの笹原 浩太郎だった。名前順の出席番号では前後しているので、クラス替えのその日からつるんでいる。あまり女好きするタイプではないが、豪快な笹原の性格は好きだった。
「やっと冬休みだな〜」
 並んで階段を上りだしながら笹原が言う。笹原は室内履きの跟を踏み潰して履いていて、階段を一段上るたびにピタンピタン、と間抜けな音を出した。
「何か予定ある?」
 唐突に聞かれて、少々面食らいながらも拓哉はぼんやりと答えた。予定と呼べるものは特にない。
「とりあえず……友達と遊んで大掃除して年越しそば食って、雑煮食って、コタツで正月テレビでも見るかな」
「つまんねぇ予定だなぁ」
「余計なお世話だよ」
 軽口を叩きながら教室に入ると、出入り口でクラスメートの女の子と戯れていた恭子がちらっと拓哉を見た。
「おはよう」
「よう。今朝かーちゃんに会ったぞ」
 自分の席に向かいながら応じると、恭子は頼みもしないのに拓哉についてくると、少し顔をしかめた。
「何かバカなこと言ってた?」
「おう。ちょっとな」
「もう……。おかーさん、篠塚君好きだから……」
「結婚してやってもいいぞって伝えとけ」
「バカね」
 くすくすと恭子が笑ったところで、やはり席に荷物を置いてきた笹原が拓哉の席に舞い戻ってくる。教室には、やはり明日から冬休みだからか浮き足立ったムードが流れていた。
「ところでさ、お前夏休み、めちゃめちゃバイトしてたじゃん」
「あぁ」
「じゃあ金、結構ためてんだろ?旅行くらい行けるくらいには」
「……まぁ」
 笹原が戻ってきたことで、つまらなさそうにクラスメートのところへ戻ろうとしていた恭子が足を止めて、こちらを向いた。
「何?旅行に行くの?」
「おお。中園も来いよ。何人か誘ってさ」
「まだ俺、返事してないぞ」
 勝手に話が進みそうな予感に駆られて、遮る。しかし笹原は、どこ吹く風というように受け流した。
「いーじゃん、行こうぜ。暇なんだろう、どうせ」
「余計なお世話だよ……」
「具体的にはどこなの?」
 一向に話を進めようとしない2人を恭子が促す。笹原は話し出した。
「そうそう。あのさ……」